先週末のリーマン・ブラザースの破綻に続いて、大手保険会社のAIGが問題となっている。結局救い手が現れず、政府が850億ドルという巨額を投じて、国営化することになった。先日の住宅ローン保証会社のファニー・メーとフレディー・マックへの投資に続くものである。これもあとで国民が税金として支払うことになるのだが、世界中の金融不安を避けるためには致し方なかったのであろう。どうしてこう次々と破綻が起こるのであろうか? リーマン・ブラザースの例をとると、2007年11月に終わった会計年度のリポートによると、総売上は192億ドルに対して、キャピタル・マーケット(自己投資分で大部分が不動産ローン関係)が518億ドル、その投資にかかる利子だけでも396億ドルである。投資額のほとんどがサブプライム・ローンだとすると、現在25%が支払い不能に陥っており、それだけでも利益はとんでしまい、おまけに証券化して販売できない額が売上の4倍にもなってしまったことになる。当然利子が払えなくなるわけで今回の破綻となったのである。AIGの方は総資産1兆ドルほどの保険会社として、世界中の金融会社の債権などにたいして保険を書いており、リーマンなどの大型の金融会社の破綻などによって、大幅な赤字になる可能性がでてきたのである。結果信用格付けが下げられた為、多額の資本増強が必要になり、資金繰りがつかなくなったわけである。これで終わりなら良いが、まだ不良債権を抱えているところが出てくる可能性はある。それでも日本のバブル崩壊後に比べると、処理が早いので、膿が出てしまえば、あとは傷が直るのも早いと思われる。 根本の問題は何かというと、資金が余っている事である。何故余っているかというと、まずアメリカ人の飽くなき消費によって、中国を始め世界中から商品を買いすぎているため、継続して貿易赤字となっていることである。他の国ならその国の通貨が切り下がり時間が経てばバランスするのだが、現在のところ、他にアメリカほどの市場が存在しない事と、ドルが基軸通貨であるため、支払われたドルが産油国や輸出国によって、アメリカに投資され返ってくることによってバランスしているのである。これらの資金は、国債や優良企業の債権など安全なところに、主に投資されるが、為替差損やインフレによる目減りを防ぐため、利率の高い証券会社の投資信託や新しい金融商品が買われることもある。この循環はここ30年ほど続いているので、各証券会社の投資部門は、常に新しい投資商品を開発しており、不動産ローンの証券化もその一つだったわけである。それでも自己資本だけで投資する分にはそれほどでもないが、安い金利を利用して大量の借金を使って運用したから雪だるま式に増えたわけである。投資額全体が大きいため、利益を出しているときは、トレーダー達に100億円以上のボーナスを払い大盛況だったが、ひとたび落ち始めるとリバレージ(借金の比率)が高いため、一世紀半以上も歴史を持つ老舗があっという間に大赤字に転落し破綻してしまったのである。加えて、信用不安が起こり、新規の資金がほとんど得られなくなったことも大きく影響している。 それでは根本的な解決方法は何かというと、貿易赤字を減らすことによって、ドルの還元を減らすことである。そのためにはアメリカ人の消費を減らすか、輸出を増やす必要があり、ある程度ドルの切り下げが起こるしかない。結果として安価だった輸入品は値上げされ、消費者の購買力は落ち、生活レベルは下がることになるので、あまりいいシナリオではないが、今回の金融不安が引き金となって、ある程度現実になるかもしれない。筆者の私見では、金融自体はもちろん必要だと思うが、それだけ一人歩きしたマネーゲームは結局カジノとあまり変わらないと思う。それぞれの個人、団体、企業を問わず、社会に対しての貢献度に応じてそれなりの報酬があるべきである。金融業界は、農業、工業、流通などに比べて、その貢献度が低いような気がするのは筆者だけだろうか?
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