9月 28, 2008 デパートメント・ストア 流通業 0

また小売業のCEO(最高経営責任者)が更迭された。アップスケールな47店舗の百貨店チェーン、「ロード&テイラー」のジェーン・エルファーズ氏である。彼女はバックネル大学をビジネス専攻で卒業後、百貨店のメイシー(当時はフェデレーテド)の傘下であるバンバーガーのマネージャー・トレイニーとして入社し、バイヤーを努め、メイ百貨店傘下のロード&テイラーに移籍後2年、39歳の若さでCEOに就任したやり手である。その後ロード&テイラーが、NRDCという投資会社によってメイシーから買収された後も、CEOとして不採算店の閉鎖や、マーチャンダイジングの見直しによって、売上14億ドルのアップケールな百貨店としての地位を築いた功労者である。しかし、最近の景気後退によって売上不振が続き、ニーマン・マーカスから引き抜かれたカタログとインターネット販売のCEOだった、ブレンダン・ホフマン氏と交代することになった。最近では、サーキット・シティーのCEOだった、フィリップ・スクノーバー氏も辞任させられている。いろいろな悪評はあるが、彼のキャリアはローカルの家電店から始まっており、ソニーなどを経て、サーキット・シティーに入る直前には、ベスト・バイで活躍した人物である。兎角、辞任・解任時の高額なゴールデン・パラシュート(退職金)ばかりが報道されて、辞めた人物は悪者になりがちだが、彼らだけの責任ではなく、短期的な利益追求をする機関投資家などの株主にもかなりの責任はある。彼らは業績が上がると高いボーナスを払ってCEOを持ち上げるが、業績が落ち出したとたん、風当たりが強くなるのである。そのため、CEOの方も、雇用契約をきちっとして自分たちを守る様になるのである。エルファーズやスクノーバーにしても小売業で育った人材として、仕事に対しての情熱と実力は十分あったと思われる。しかし、マクロ経済環境対応や、大きな組織の人材育成は、なかなか1人の力で短期間に結果を出せるものではない。日本でも最近アメリカの短期的な経営が取り入れられ始めており、2006年に上場株の買い戻しをした外食産業大手のすかいらーくは、野村ホールディングスの子会社、SNCインベストメントが筆頭株主となり、2008年の8月には、創業者の一人である横川竟氏を解任した。非上場後の業績回復が予定通りすすんでいないというわけである。横川竟氏は、ジョナサンの社長をされている頃、同社社員のアメリカ研修のお世話していた関係で何度も個人的にお会いしているが、仕事に夢のある情熱的な人物であった。社員を大切にし、信賞必罰をきちっとわきまえた経営者だったと覚えている。2年の再建期間が長いか短いかは判断がむつかしいが、経営環境の変化は、個人の能力を超えていることは多々あるものである。短期的な数字だけを観て、経営者の善し悪しを判断するのは、アメリカの企業の悪い部分だと私は常々思っており、日本の小売業にはあまり真似して欲しくない部分のひとつである。因みにギャップから解雇された元CEOのドレクスラー氏は、その後入ったJクルーの立て直しを見事に成功させている。商売は商売人がやるべきで、金融業の物差しで計ってはうまくいかないと筆者は思う。