8月 29, 2020 ディスカウント・ストア 流通業 0

ウォルマートは、9月15日までに売却されない場合、アメリカで禁止されるTikTokの買収候補となっているマイクロソフト社に、パートナーとなると報じられている。同社のプレス・リリースでは、この報道を認めており、TikTokのeコマースと宣伝効果に投資価値があると述べている。マイクロソフトは、ウォルマートのクラウド・コンピューティングなどでテクノロジー・パートナーとなっており、この買収が成功した場合、ウォルマートにとって、新しいソーシャル・メディアにも足掛かりを持つことになる。TikTokはアメリカで8000万人ほどのユーザーを持つと推定され、16歳から24歳の若い層が圧倒的に多い。買収総額は200億ドルから500億ドルと推定され、ウォルマートの負担額は明らかにされていないが、もし実現すると相当な投資となる可能性がある。

TikTokは短いビデオを中心としたソーシャル・メディアで、ミームが中心であると理解している。このニュースを聞いて、最初に思ったのは費用対投資効果がないという印象だった。宣伝媒体としての可能性はあるが、1兆円以上の価値があるとは思えない。また、ブランド宣伝として考えても、ウォルマートのターゲット顧客を考えると不可解である。将来の顧客開発としては理解できるが、ウォルマートはターゲットにはなり得ないし、もしなった場合、逆に企業価値が下がってしまう。それでジェネレーションXとZ(子供達)の意見を聞いてみた。彼らが共通して言ったのは、オンライン・ゲームの媒体と、購入者ではないが、インフルエンサーとしての世代へのアピールである。ウォルマートでヤング・ファッションを購入する顧客は今のところ少ないだろうが、少なくとも彼らのテーストが購入決断に与える影響は少なくない。また、TikTokの傾向を分析して品揃えや商品開発に役立てるのは価値があるだろう。ゲームに関しては、最近サブスクリプションが増えており、ウォルマート+の恩典の一つとすれば効果は高いかも知れない。VuduをFandangonに売却してしまったウォルマートは、エンターテインメントではAmazonに対抗できるものを持っていない。COVID-19の影響で、家庭で楽しめる娯楽は急成長しているし、コロナ後も家族を中心とした価値観は継続すると予測される。ニューヨーク・タイムスはTiTokのeコマースの可能性を上げており、中国では今年1億4000万ドルの売上となり昨年から倍増すると報じている。しかし、地方の小売店舗数が圧倒的に少ない中国とアメリカでは小売環境が大きく異なる。20世紀初頭のシアーズやJCペニーのカタログ販売が中国ではeコマースになったと理解するべきである。ウォルマートの出資は少数株主としての規模になるのではというのが、筆者の結論である。