アメリカで人気の高いビールであるバド・ライトが、ボイコットの対象になっている。1850年に創業されたアンハイザー・ブッシュのミズーリ州セントルイスの工場は今でも稼働しており、マスコットになっているクライズデールの馬も健在である。訪れた人達には醸造所のツアーも提供、ギフト店ではバドワイザー・イーグルのTシャツを販売している。一方、同社のマーケティング事務所は、ニューヨークのチェルシー地区にあり、最新のトレンドを取り入れたマ―ケティングを計画している。今年3月には、バド・ライトのマーケティングとして、トランスジェンダーのソーシャル・メディアのスターを起用した販促を行い、文化戦争に巻き込まれている。40年の歴史をもつバド・ライトのマーケティング担当VPに、初めての女性であるアリサ・ハイナシャイドが起用され、売上が下がっていたブランドを活性化するため、女性や若い層にアピールするための販促の一つだった。起用されたディラン・マルバニーは、女性の意識を持って男性として生まれたトランスジェンダーで、彼女の起用は、WOKE(目覚めた)の人達が多い若い層に支持されると想定したが、逆目に出た様である。また、問題になった後の対応も、中途半端な姿勢だと批判されている。結果、ブランドの販売量は、5月13日時点で前年比で30%近く下がっている。その後、同ブランドを退役軍人の組織に対するスポンサー、フットボールやカウントリー・ミュージックなどへの宣伝を加え、本来のターゲット顧客に対する販促に戻している。WSJ
ソーシャル・メディアのインフルエンサーは、数百万のフォロワーを持っている人達もいるが、極めてフォーカスされた支持層が多く、一般大衆のブランドのスポークスパーソンには向いていないのかも知れない。過去にも多くの失敗例があり、ビジネス・スクールのケース・スタディーになっている。小売業でも、最近ターゲットの子供用ジェンダーフリーの水着*も問題になっている。包括の考え方は理想的だが、企業が実行するにはまだ様々な問題が付きまとう。*男児の商品にプリンセス風なビキニの水着があったが、24日時点ではサイトから除かれている